これ以上、
足を踏み出すことが出来ずに、
僕は庭の中央で足を止めた。
あの日の記憶が、
僕を離さず縛り付ける。
『また、逃げるのか?』
記憶の中の、僕が言う。
『行かないで、了』
2年前で止まった、
記憶の中の母さんが僕に言う。
やめてくれ。
僕を、
呼ばないでくれ…。
『了、了君』
思えば思う程強くなる、
母親の声。
「母…さん……」
見上げた空は、
僕を戒めるかのように、ひどく荒れていた。
そういえば、
こんな空だったっけ。
僕が、両親を殺した日も、
こんな大雨だったから。
だから、思い出すんだ…。
全てが変わった、
あの日の記憶を。