「了……!」


考えるよりも早く、
瞬が了君の元へと走り出した。

私も、瞬の後を追って施設を飛び出す。


しかし、扉を開けた玄関先で、
1点を見つめて、瞬は立ち止まっていた。


「瞬……?」


私の声は、大雨にかき消される。

瞬の視線の先には、
庭の中央で立ち尽くす了君の姿。

小さな背中が、
震えている。

了君は雨も気にせず空を見上げていた。

まるで、
何かを、
思い出しているかのようだった。


自分を、
ここまで変えてしまった過去を…。