「1回だけでもいいから、泊まりに行ってみたら?何か、変わるかもしれないよ」
優しく言う虹心に、
了は小さく首を振った。
「……分かんないよ……」
了の口から漏れた微かな声に、
俺たちは揃って聞き返す。
「ごめん、もう1回言っ ──── 」
「家族がいた事がない瞬たちに、
僕の何が分かるんだよ…!!」
虹心の肩が、ビクりと震えた。
了の握った拳が、
微かに震えている。
「了……君…」
虹心が了に向かって伸ばした手を、
俺は止める。
「虹心、行こ…」
俺は虹心の腕を引っ張って、
了の部屋から出た。
廊下の眩しさに、一瞬目が眩む。
隣に立っていた虹心は、
暗い顔をしたまま俯いていた。
"家族がいた事がない"
その言葉が、
虹心の心のポッカリと空いた穴を、
更に深めたのだろう。
「 虹心、気にすんなって」
そうは言ったけれど、
俺だって多少の動揺はある。


