「ごめ、今なんて?」
聞き間違えかと思ったのか、
固まった表情で目を丸くする。
「だァかァらァ!ありがとうって言ってんだよ!」
人にお礼を言うのは苦手だ。
特に、成宮みたいに、
人の心を見透かしたようなやつには。
言い終えるより早く、
成宮が俺の肩を殴る。
「って!?」
俺はベンチから立ち上がって、
成宮と距離を取る。
なんで突然殴ってくんだよ!?
「もう!突然素直になんな!バカ!」
立ち上がった成宮に、
もう1発殴られる。
「って!?何で!?」
不思議と悪い気はしない。
気持ちが、少し落ち着いた。
遠くに聞こえる祭りの音。
俺たちの空間には、
俺たちのはしゃぐ声だけが響いていた。