「もしも ──────」
電話口に向かって話しかけた時、
突然、口が塞がれた。
びっくりして目を見開く。
目の前には、明君の伏せられた長い睫毛。
一気に、私を明君の香りが包んだ。
えっ……。
どういうこと……。
状況を理解するのに時間がかかる。
わ……私……
明君とキスしてる……?
『おい、虹心?聞こえてんの?』
奥から、瞬の声が聞こえてくる。
けれど、現実に引き戻されるには、
それでは足りないくらいに、
私の頭は混乱していた。
唇から温もりが遠ざかると、
今までに見たことがないくらいに、
艶っぽい表情の明君の顔が露になる。
明君の細められた目に、
ドキッと心臓が飛び跳ねる。
私、明君とキスした…。
その言葉だけが、
私の頭を駆け巡った。