君に声届くまで。



「どうだい!やってみるかい!」


出店のおじさんが、
私にポイを渡してくれる。

そういえば、去年杏ちゃんが連れて帰ってきた金魚が、最近死んじゃったんだっけ…。

皆で庭に埋めたのを思い出す。

私はお金を払うと、金魚すくいにチャレンジした。




「あぁ!お嬢ちゃん、残念だったね」


「うぅ~……」


私は穴の空いたポイを見つめてそう漏らす。
格闘すること数分。

金魚は1匹も取れなかった。
金魚すくいって難しいなぁ……。


「お兄ちゃんもどうだい!彼女さんに取ってやんな!」


おじさんは、今度は明君にポイを差し出した。

かっ……彼女って……。

私は明君を見上げた。

明君はコクリと頷くと、
金魚すくいに挑戦した。