君に声届くまで。



「………」


お互い、口を開かない。

スマホも鳴らさず、
無言のまま肩を並べる。

人混みの中の少し先、
仲良さそうに歩く瞬と希望の背中を見つめながら、ボーッと歩いた。

何か、言わないと……。

けれど、
変に緊張してしまって、
話題が出てこない……。


その時、明君がスマホをポケットから取り出した。

どうしたんだろう、と思っていると、
案の定、私のスマホが鳴った。


『浴衣、似合ってるね』


その言葉に、ドキッとする。

似合ってる……。
その言葉が、頭でこだまする。


『ありがと〜。でも、全部希望が選んでくれたんだけどね笑』


『そうだったんだ。すごく、可愛いと思う…』


「うはっ!?」


"可愛いと思う"


可愛い……?
今、確かにそう…。

私は、何度も明君から送られてきた文字を確認する。

可愛い、何度見ても、そう書いてある。