「最近すごく明が笑うようになったのは、虹心ちゃんのおかげだったのね」


明君のお母さんが、
ふわりと微笑む。


お母さんの目から見ても、
明君は笑うようになったんだ……。


「楽しそうに学校に通ったり、明がこうやって友達を連れてきてくれるなんて、今までに1度もなかったから…。本当にありがとうね、虹心ちゃん。明を、連れ出してくれてありがとう」


大きな潤んだ瞳が、
真っ直ぐに私を見つめている。


私の方なのに。

明君に助けられたのは、
私の方なのに……。


「そっ…そんなこと、ないです。私が、ただ明君の事を好きなだけで……」



言った後で、ハッとする。

今の好きは、そういうニュアンスではない。

確かに、私が明君のことを好きなのは事実だけれど、
お母さんに伝えたかった好き、というのは、そっちではなくて……。


そんなこと言えるわけもなく、
明君のお母さんは目を丸くした。


「まぁ!まぁ!!うふふっ……嬉しいわ…ほんとに…ありがとう……」


お母さんは心底嬉しそうにそう笑って呟くと、
また、カレーを作り始めた。

その頬には、涙が伝っていた。