「あれ?陸人、帰ってたんだ」
「……」
「返事くらいしてよね」
あたしの弟の、神崎陸人(カンザキリクト)。
あたしを押しのけて部屋に走っていった。
どうみても無愛想。
小さい時はこんな冷たくなかったのにな……どうしたんだろ?
リビングのテーブルに紙が置いてある。
置き手紙だ。
“二人へ
お母さん、今日も遅くなるから
冷蔵庫にあるおかず、チンして食べてね。
お母さんより”
こんなの毎度のこと。陸人も見たのかな?
さっきあたしが来たとき、この辺に立ってたし。
きっと見たんだろう。
陸人は嫌な気持ちになってるのかな?
お母さんが夜遅くまで働いていること、どう思ってるんだろう?
あたし……陸人のこと、なんにも知らないや。



