空になったキミへ





「………ぁの、さ」




「………」




 ……はぁ?!無視?今磯原くんと目、合ったのに。



 絶対聞こえてるでしょう。




「あ、あのさ!」



 次は、絶対に聞こえるような声で言ってやった。





「……クスッ。何だよ、暴力女」



「……なっ」



 ひっど!わざわざ“暴力”っていう単語を強調して言わなくても。




「……言うけど!昨日…あ、あたしが平手打ちしたのは、その……悪いと、思ってる。け、けど!あたしは……別に、磯原くんに謝ろうだなんて思ってないから!!」




「………」




「悪いのは、白石くんにあんなこと言った磯原くんだから!!」





「……フッ…ダッサ。なに熱血になってんの?てか、謝らないとか言って“悪いと思ってる”って、謝ってんのと一緒じゃん。…神崎さんバカじゃねー?」




 何なの?ほんと磯原くんってサイテー。





「てか、神崎さんはなんでそんなに白石のことを庇おうとしてんの?ねぇ」




「それは……。ていうか!磯原くんだって、なんで白石くんにあんなこと言ったの?白石くんのこと……何も知らないくせに!」



 あたしはつい本気になってしまった。




 磯原くんがあたしのことをジッと見つめる。




「あのさー」



 磯原くんが眉間にしわを寄せながら言った。





「“白石くんのこと何も知らないくせに”って、じゃあ神崎さんは白石のその“何か”を知ってるわけ?」