空になったキミへ






 あの後、早妃ちゃんたちは自分の席へ戻っていった。




「なーみんなー」


 突然、磯原くんが声を上げて言った。




「白石ってさー、サイテーだと思わないか?あの時俺を無視したじゃーん」 



 “あの時”というのは、白石くんが転校してきた時のこと。


 磯原くんが話しかけたとき、白石くんは磯原くんを無視したのだ。





「反省とかしないわけ?俺、謝られてないんだけどなー」




 一気に教室中が静まり返った。





 磯原くんがこっちへ向かって来る。




「ねぇ、邪魔」


 えっ?あたし?


「あっ………」



  
 磯原くんはあたしの机が邪魔だったらしい。


 邪魔って酷いなぁと思いながら、あたしは机を少しずらした。


 だってなんかされたら怖いから。



 そんなことする人かは分からないけど、従ったほうが良いだろう。





 弱虫だなぁ……あたしって。