空になったキミへ

 





 高野先生のちょっとした寸劇が終わり、みんなが急かすように言った。





「高ぴー!転校生は?」


「おっ、みんなもう知ってるのか~」



 高野先生が得意気に言った。




「楽しみにしてろよ。よし、白石入ってこい」




 みんなの視線が転校生に集まった。





「東京から来ました、白石星空(シライシカナタ)です」


 転校生は、それしか言わなかった。




「星空って書いて、かなた?」


「白石、それしか言うことないのか?」


「はい」


「じゃあみんな、仲良くしてやってくれ。白石の席は、1番後ろの窓側だ」


「はい」





 転校生の白石くんが、こっちへ向かって歩いてくる。


 『よろしくね』って言わなきゃ。




「白石くん、だよね?あたし、神崎紫花。よろしくね?」



「……」





 聞こえなかったのかな?……ってそんなわけないよね。


 ……もしかして、しかと?ひどっ!


 人見知りのあたしが勇気出したのに。




 冷たいなぁ。陸人みたい。





 はぁ……本当、今日は憂鬱だ。