狐と嫁と溺愛と

怒ってるのは雰囲気でわかる。



だけど、あたしは襲われかけただけで、悪いことはしてない。



「む、ムカつくっ‼︎こんな目に合って、なんであたしが怒られんの⁉︎わけわかんないことが目の前で起こって、それだけでもパニックなのに‼︎」

「とりあえず、寄ってくる前に帰るから」

「寄ってくる⁉︎なにが寄ってくるのっ‼︎」

「さっきみたいなやつ。なに?喰われたい?だったらこのまま放置してやるよ」

「ちょっ、大河さんっ…」



振り向きもせずに行ってしまった大河さん。



体が熱い。



さっきの恐怖で、足が震えて力が入らない…。



なんで置いてくの…?



さっきみたいなことが、また起こるの…?



「ヤダよっ…。大河さんっ…置いていかないでぇ…」



誰も頼る人がいないんだよ…。



お父さんもいなくて…あたし、ひとりぼっち…。



こんな時くらい…誰かに優しくされたいのにっ…。



「ごめんなさいは?」

「ごめっ…なさいっ…」

「仕方ないね、連れて帰ってあげるよ」



あたしには、この人しかいないんだ…。