狐と嫁と溺愛と

注射器を取り出した先生は大河さんに近づいた。



「腕を出していただきたい」

「触るな。触られると…殺したくなる」

「奥方、ちょっと手伝ってくだされ」



あたしがっ⁉︎



さっきの高島さんみたいななるんじゃ…。



ビクビクしながら、大河さんに近づいた。



「来るなっ‼︎お前を傷つけたくないっ‼︎」

「大丈夫だよ、大河さん。手を…握って?」



怖い。



本当に怖い。



殺されるかもしれない。



だけど…。



「大河さんに殺されるなら、それはそれでいいかな?」

「やめろっ‼︎触るなっ‼︎」

「大丈夫、あたしは、大丈夫」



尻尾が体に巻き付いた。



これでさっきの高島さんみたいに絞められたら、本気で秒殺かも。



「ナナっ‼︎ぐはっ‼︎」



危ないと思った志鬼くんが駆け寄ると、大河さんに弾き飛ばされる。



ごめん、志鬼くん。



あたしに巻き付いた尻尾は、あたしを絞めない。