狐と嫁と溺愛と

少し落ち着いてきた。



さすがに部屋に戻る気にはなれなくて、大河さんの部屋の外にいる。



ガシャンとか、ドンッとか、すごい音が聞こえるんだけど…。



志鬼くんは大丈夫…?



「ナナ様っ‼︎先生が来てくださいました‼︎当主様の様子は…」

「わからない。志鬼くんが見てくれてるけど、さっきからすごい音が…」



あたしでもわかる。



今の大河さんは、正常ではない。



「死人がでそうじゃな」



そう言って一呼吸してから、おじいちゃん先生がドアを開けた。



恐る恐る中を覗くと、ボロボロの壁と、ボロボロの志鬼くん。



大河さんは志鬼くんと対峙していた。



雰囲気が…大河さんじゃない…。



「当主様、落ち着きなされ」

「じじぃ、遅かったな。早くどうにかしろ。衝動が…止まらねぇ…」

「それが妖の本質。仕方のないこと。誰かを殺して、満足なさるか?」

「ふざけるな‼︎殺すぞ、じじぃ…」

「そうですか。では、眠りましょう」



大河さんに術は聞かない。