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春休み直前、大河さんがヘトヘトで帰宅。



「終わった…」

「おかえりなさい…?」

「やっと終わった…。ナナ、抱かせてくれ」

「は…?」

「マジで、3日寝てねぇ。俺、過労死するかも。俺の力を回復してくれ‼︎」

「イヤだ。そんな理由で初体験とか、本当に虚しい」



大河さんが壊れてる…。



相当激務だったようで、今にも倒れそうだ…。



「とりあえずお部屋に行こう?」

「運んでって…」



ポフッと狐の姿になった大河さんは、あたしの足元にやって来た。



着ていたスーツの中からモゾモゾ現れるってことは、服は着てないってことだよね?



「裸なの…?」



無視なのか、とにかく話さない大河さんを仕方なく抱き上げた。



「当主様⁉︎なぜそんなお姿でっ⁉︎」

「運んで欲しいみたいで…」

「初めて見ました、当主様の獣姿…。美しいことに変わりはないんですね」



高島さん、そういうことはどうでもいいよ。