狐と嫁と溺愛と

挨拶しなきゃっ‼︎



「は、初めまして…ナナと言います…」

「これはこれは、社長夫人、おはようございます。私、社長秘書の柴田と申します」



できる男って感じだ…。



この人が社長秘書…。



「千尋(チヒロ)っての。うるせぇんだ、これが」

「うるさいとは?私は与えられた業務をこなしてるだけですよ?社長がしっかりしてくだされば、小言なんて言わなくて済むんですがね」

「うるせぇうるせぇ、チワワはキャンキャン鳴くのが得意だよな〜」

「チワワではありません‼︎私、列記とした柴犬です」

「そうだったか?柴も吠えんのが好きなのか」



まさかまさかの犬の妖。



大河さんの近くにいるのって、狐だけじゃないんだ…。



どんなところなんだろ、大河さんの会社。



「じゃ、行ってくる」

「いってらっしゃい。今日は…」

「帰れるか?千尋」



取り出した手帳をパラパラめくる千尋さんは、メガネをクイっと中指で押し上げた。



この人、笑ったりするのかな…。