狐と嫁と溺愛と

逃げようとした。



なのに、腕を掴まれてて逃げられない。



そのまま抱きしめられて、苦しくて、涙が溢れて。



「俺はお前を愛していいの?」

「えっ…?」

「信じて、裏切られたりしねぇの?」

「どういう…意味…?」

「ナナの本当の気持ちが知りたかった。それだけで、お前の心を覗いてた」



苦しそう…?



高島さん達が妖の世界に行ってから、大河さんはずっと妖の姿だった。



あたしの気持ちを、探っていたってこと…?



どうしてそんなことするの…?



「昔、好きになった人間がいたって話しただろ…」

「うん…、死んじゃったんでしょ…?」

「違う。違うんだ…」



かつて好きになった人間の女性。



大河さんが結婚したいと思ったほどの人。



「一緒に暮らしてた。婚約もしてたからな。そして、昔の俺は今ほどの地位もなかったし、親しいヤツも多かった」



忙しくなり始めた大河さんの日常。



すれ違いの生活になった時、寂しさに耐え切れず、婚約者の女性は、大河さんの信用していた友達と浮気。