レオは軽く会釈して、部屋の外へ出て行った。
(綺麗な人……。でも、誰かに似ている?)
「さてと……」
ディゼルは椅子から立ち上がり、ステラの元へ近づいて来た。
何かされるのではと無意識的に体に力が入ったが、ディゼルはステラのそばまで寄ると、頭をそっと撫でただけだった。
「???」
父と弟以外の男性にこんなに近づいたことがなかったステラにとって、この状況の中で自分はどうしたらいいのかわからなかった。
「久しぶりだな。ステラ」
「え……?」
「……と言っても、覚えていないだろうがな」
ディゼルは寂しそうに、ステラの頭から手を離した。
「10年ほど前だったか、私がまだ王太子だったとき、先王とともにラズラエザへ訪れたことがあるんだ」
「そうだったんですね。すみません。覚えていなくて……」
「一応命の恩人だぞ。森で迷子になったお前を助けてやったんだからな」
その言葉を聞いて、ディゼルの顔を見張った。
もしかして……!
「もしかして、ラズラエザ王宮の東にある森ですか?」
「ああ。そうだ」
驚いた顔で瞳の奥をまじまじと見るステラだったが、しばらくするとその顔は満面の笑みに変わった。