「……臭くて泣きそう」






素直じゃない私の言葉だって、分かってくれる。





「うるせえよ、洗ったばっかりだわ」




ぽろぽろとこぼれる涙は、恭介のジャージを少し濡らした。





「お前さ、ザッキーのフルネーム言える?」


「え?」




ザッキーのフルネーム?

フルネーム…。

山崎?楢崎?




「わかん、ない」





恭介にかけられたジャージから少し顔を出して答えれば、やっぱりな、なんて笑う。




「そのくらいアイツは凛子にとってどうでもいいヤツだったんだろ。

だから気にすんなよ」







まあ、元彼の名前言えないのもどうかと思うけど。なんて続ける恭介に、何故だか頬が緩む。



なによ、いつも私には思いやりのカケラもないくせに。


なによ、ただのゲームオタクのくせに。



私をドキッとさせるなんて、100万年早いでしょ。