「…もう思いつかないわ」
タオルを取ると、怪訝そうに
「なんの話?」
と眉をひそめる凛子。
それすらも愛しいと思ってしまうこの気持ちに、言い訳はこれ以上思いつかなかった。
「…ていうか、タオルかけてなくていいの?」
かなり上の方まで上がっていた観覧車。
怖くないといえば嘘になる。
「怖い」
「じゃあタオルー…」
「怖いから、こっち来て」
俺の隣を指差すと、本気で驚いている凛子。
「なに、どうしたの…」
笑って誤魔化そうとした凛子だけど、笑わない俺に少しとまどってからこっちに移動して来た。
揺れないように静かに歩くのは、きっと気遣い。