「ねえ、瀬見くんのホットコーヒーひとくちちょうだい?」
「ん、いいよ」
恭介のコーヒーをひとくち飲む河谷さんに、やけにモヤモヤしてしまう。
「凛子ちゃん、俺のアイスコーヒー飲む?」
ストローをこちらに向けてくる景ちゃんに、
「…苦いの嫌いだからいい」
と断って、甘いココアを口に含む。
苦いのは嫌いだ。
甘さだけでいい。
恋だって、甘いだけでいい。
楽しさと幸せと、トキメキさえあればいい。
苦しさとか切なさとか寂しさとか、そんなのいらない。
だから恭介を見ると泣きそうになるこの気持ちは、恋じゃない。
恋じゃないよ、恭介。