「…帰る」




そう言って勢いよく部屋を飛び出して行った凛子の大きな瞳には、いっぱい涙が溜まっていた気がした。


あまり見たことがない凛子の泣きそうな顔に動揺して追いかけようとした俺の手を、冷たくて小さなそれがつかんだ。




「なんで追いかけるの?」


「河谷さん…」




昼頃に映画に誘われて、一緒に映画を見て。

課題をやらなきゃいけないのに教科書を学校に忘れて来たっていうから、俺の教科書を渡そうと思って俺の家まで来て。


そしたら部屋に凛子が来てて。


そして今、追いかけようとした俺を河谷さんが止めた。