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「春の宴、楽しんでいただけたでしょうか。」

 広間に広がったジアの声。鮮やかな黄緑色のドレスがふわりと広がる。

「このような宴を開催できるほどに、みなさんが元気になってくださっていることに、一番の喜びを感じます。」

 広間が静まり返り、皆がジアの言葉に耳を傾けている。

「これからもたくさんの宴の場を共有し、いつでも皆さんの声に耳を傾けていきたいという気持ちがより一層強くなりました。たくさんの貴重なお話もうかがうことができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。皆さんにとっても、そんな時間になっていたのなら幸いです。本日は誠にありがとうございました。」

 ジアが深々とお辞儀をすると、拍手がより一層強くなった。

「…眩しいな、ジアは。いつだって。」

 より輝きを増していく彼女に引け目を感じているのは自分の方だとキースは思う。隣に立つために必死なのは、自分だ。

「…そーんなこと言ってる生ぬるいやつしかいねーなら、オレが貰っちゃうけど?」
「え…?」

 キースが振り返った先には、深緑の長髪を後ろに束ねた男がにやりと笑って立っていた。

「…いくぞ。」

 パチンと音が鳴ったかと思うと、そこにいた男の姿が一瞬で変わった。

「きゃー!」
「な、なんだ…!?」

 広間のガラスが割れ、辺り一面に破片が散らばる。

「…りゅ…龍…!?」
「ミア、大丈夫か!」
「クロハ!」

 ミアの前に立つクロハを確認する。

(ジアの護衛はどこだ?)

 緑の龍は、背中に6人の人間を乗せていた。

「姫さん、オレの妻となれ。」

 龍が見据え、口を開いた先にいたのはジアだった。