「よかった~!白玖さまに外に出されてから中に入れてもらえなかったから、手当とかできなくてっ!おいらの仕事だったのに、蒼子の怪我の手当」




蒼子は、少し前に立っていた白玖を見上げる。
白玖は表情を変えずそこに立っていた。


そして、自分の腕に巻かれた包帯を見ると、ああ、と納得する。
だから、白玖が自ら手当てをしたのだ。
入れさせなかった理由はわからないが、手当てをしている様子を想像すると少しおかしかった。




「蒼子?なんで笑ってるの?」

「え?ううん」




蒼子は志多良に笑いかける。
その笑顔を、白玖はただじっと見つめていた。




「志多良心配かけてごめんね。今回は結構軽いケガだったし、大丈夫なの。白玖が手当もしてくれたみたいだしね」

「白玖さまが?」



志多良が蒼子から体を離し白玖を振り返ると、白玖はなにも言わず顔をそらし歩き出した。




「お待ちください!今、料理の準備を!」




志多良は張り切ってそう言うとパタパタと走り去る。