「見つけた」




暗闇の中、小さな囁く声を聞いた。
幻聴まで聞こえるようになったのかと体を震わせる。




「迷子?」




再び聞こえた声は、今度は確かに耳に届いて。
いつの間にか木の格子の前に人が立っていたのにようやく気付いた。

暗闇に目が慣れてきていても、見ようと思わなければ見えないのだと。




「・・・誰?」

「また狐が迷い込んだのかと思った。喋るんだ」

「え・・・?」


喋ることに驚いたらしいその人に、蒼子は怪訝そうな顔で目を細める。
暗くて相手の顔が見えない。
見ようと頑張ることも疲れて、相手がだれであろうと現状は変わらないと目を伏せた。




「なんでこんなところにいるの?」

「なんでって・・・、あんたたちが連れてきたんでしょう?」




誰かは知らないけれど、と続けた。
するとその相手は、黙ったまま何やら考えている。