「お初にお目にかかります。覚(さとり)と申します」


恭しく頭を下げた妖。
人の成りをし、毛のような髪のような長髪を逆立てまるでライオンのタテガミのようになっている。

両手には包帯を巻きつけ正座をした膝の上に乗せていた。




「挨拶はいらない。蒼子を見て欲しい」




すがるような思いで白玖がそう言う。
覚は一度深く頭を下げると、布団に横たわり固く目を閉じた蒼子の側に寄った。

するすると両手の包帯を外す。
包帯を外した手を蒼子の身体にそっと触れた。




「私は、こうして触れることにより、より深くその者を知ることができるのです。怪我や病気を治すことはできませぬが、原因を突き止めることくらいはできましょう」




目を閉じ、集中すれば見えてくる。
蒼子の心が、身体が発する言葉が。

白玖たちは、固唾をのんで見守る。



しばらく静かな時が流れた後、覚がそっと目を開いた。




「この者は、不思議な力をお持ちのようで」




そして、そう呟いた。