「蒼子さま、綺麗!」



牛鬼に着付けてもらった着物は、桜色の可愛い着物。
小柄模様が可愛らしく、髪も軽く結わえてもらった。
蒼子は、普段ここで着ていた着物とは違う上質な着物に気分が上がり鏡の前でくるくると回った。



「じゃあ、蒼子さま。気を付けてね。お祭りって言っても、妖のお祭りだから、来ているのも催しているのもみんな妖だから」

「あ、そっか。うん。気を付ける」

「白玖から離れたらだめだからな」

「うん」




何度も、そう言われ、蒼子はしっかりその言葉を胸に秘める。
うかれすぎてはだめだ、と気を張った。

部屋を出て、用意してもらった下駄を履くと、白玖が待っている門のところまで行った。



白玖は、いつもの着流し姿だ。
足元は、下駄をはき、腕を組み門の外を眺め待っていた。

絵になるなぁ、としばし見惚れていた蒼子は改めて白玖の名を呼ぶ。




「白玖!」




声に顔を向けた白玖は、蒼子の姿に息をのんだ。
着物姿を見たことないわけではなかった。
この世に合わせ、着物で過ごしていた蒼子なのだから。