その様子を部屋の中から見た天は悔しさに唇を噛みしめる。
憎悪のこもった瞳で庭で白玖に笑顔で手を振る蒼子を見ていた。



天は、部屋を飛び出すと、白玖の後ろを通り屋敷を後にした。



白玖は、一度も天を見ることはなかった。
そのことに気づき、天は一層憎しみの炎を燃やした。




「今日は、早かったなぁ」

「え?」



白玖の後ろを通って帰っていった天を見て志多良が呟いた。
志多良は、白玖が天としていることはわかっていなかったが、天が部屋に来るとしばらくは出てこないことを知っていた。
しかし、今日は入ってすぐに出てきた。
それを不思議に思っていたのだ。




「いつもあの狐がくると、白玖さまは部屋に籠られるんだ。なにをしているんだろうなぁ?」

「・・・」




蒼子には、なにをしているであろうか、想像はできていたが口に出すことも考えることもしたくなかった。
だから、先ほど天が部屋に入っていくのを見てしまった時も、気づかないふりをしてしまった。

でも、すぐ出てきたことに、ホッとしていたのだ。