この世に戻ってきて一月が経った。
何度かあの丘に行ってみたが、どうしても妖の世にはつながらなかった。


閉ざされてしまった妖の世界への道。
こうなってしまえば、あの世界の事がまるで夢であったかのように思える。



それほどまでに、遠い場所にあるのだと寂しく思う。




「白玖・・・。牛鬼・・・。多々良・・・。志多良・・・」




思い返すように名を口にすると、思い出される皆の顔。
懐かしみながらも、生きていかなければいけないのだと気持ちを切り替えなければいけないのだと自分に言い聞かせる。




「それでも・・・」




あの日々は確かにあったのだと。
忘れることはできない。


ガララ、と教室の戸が開く音が聞こえる。
今は休み時間だ。
誰かが入ってきてもおかしくはない。




「・・・こ・・・、蒼子さま・・・」




事きれそうな小さな声が聞こえる。
その声に聞き覚えがあった蒼子は顔をあげてその扉の方へと視線を向けた。




「な、なに?」



教室にざわめきが生じる。