蒼子には、以前の生活が戻っていた。
家族のいない蒼子の捜索願は出されておらず、学校に行けば教師にはひどく心配されたが誤魔化すように言い訳を連ねると簡単に信じてもらえた。

親友のゆかりも、心配してくれていたがそれもどうにかごまかすこともできた。



以前の当たり前だった生活が帰ってきた。
それは、喜ばしいことなはずなのに、蒼子の心にはぽっかりと穴が開いてしまったようだった。



いつの間にか当たり前になっていた妖たちとの騒がしい日々。
辛く苦しいことも多かったが、いつも一人だった蒼子にはかけがえのない日々だったのだとなくなって気づいた。




「はぁ」




ため息の数も必然的に増え思い悩む日々。
白玖はどうしているだろうか。



自分がいなくなって、ケガを引き受ける者がいなくなって、苦しんでいるんじゃないか。
そんな心配がよぎっては頭を悩ませた。



不気味で、恨めしいだけだった力。
その力を必要とされた場所。



不気味だと虐げられることはなく、受け入れてくれた人たち。




利用されていただけでも、それでも、蒼子にとっては嬉しいことだった。
不気味なこの身体も、妖たちの中ではそれ程不気味でもないのだと。
それがどれほど心地いいものだったのか。




失くして初めて気づくこともあった。