白玖は持っていた荷物を蒼子につきつけるように渡す。
蒼子はためらいながらそれを受け取ると、伺うように白玖を見上げた。


白玖は何の感情も持たぬ顔で蒼子を見下ろす。




「お前はもういらない。どこにでも行け」




白玖は一言そう告げると、蒼子を通り過ぎ元来た道へと帰っていった。
蒼子は突然の事に身動きもとれず、ただ茫然と立ち尽くしていた。



「白玖さま!?」



多々良は惑いながら、仕方なく白玖の後を追った。
残された蒼子がようやく振り向くが、もうそこには妖の世界へ通じる道は消え、白玖の姿も多々良の姿もなくなっていたのだ。




「どうして・・・?」




蒼子の頬を一筋の涙が伝う。
いらない、と切り捨てられたことに、酷く傷ついている自分がいた。


元の場所に戻れた喜びよりも、その気持ちの方が大きいことに蒼子は気づいた。





せっかく、白玖に少しだけでも心が現れたと思ったのに。
自分が、必要とされているんじゃないかと思っていたのに。




それはすべて、勘違いだったんだろうか・・・。
蒼子は悲しくなって顔を覆って泣き出した。