蒼子の毒は、多々良たちの献身的な看病と、もともとの治癒能力の高さゆえにすぐに体から消えた。
しかし、起き上れるようになっても、白玖は一向に部屋に顔を現すことはなかった。




「あの・・・、白玖は・・・」




蒼子が遠慮がちにそう尋ねると、多々良は表情を暗くさせた。




「母上様のところに行ったきり・・・私にもどうされているかわからないのです」

「そんな・・・」




白玖の事をモノとして扱い、今回の件を引き起こしたであろう白玖の母。
そんな相手のもとにいて、平気なのかと蒼子は不安に思った。
しかし、思ったところでなにもすることはできないと小さく息を吐き出した。





「蒼子さん・・・」




そんな蒼子を見つめ、多々良は苦しげにつぶやいた。
蒼子を連れてきたことへの責任を強く感じていた。



白玖が戻ってきたのはそれからしばらくしてからだった。
突然部屋に戻ってきた白玖は、最近少しだけ出てきていたはずの表情も消え冷たい瞳で蒼子を見た。
その瞳に、蒼子は肩を震わせた。

白玖の様子に、恐怖を感じたのだ。