少しずつこの世界にも、大切なものが増えた。
人を避けて生きていた蒼子にとって、こんなにも周りが騒がしい日々は初めてだったかもしれない。
だからこそ、少しだけ居心地がいいと思ってしまっているのかも。
「今は、もう少しみんなの側にいたいなって思うから・・・かな」
「では。俺は、蒼子さまが妖の世にいる限り、側にいて護るからな!」
「ふふっ、ありがとう」
頼もしい味方ができた。
自分を慕ってくれる心優しい妖。
怖ろしいことはあるけれど。
辛い思いもあるけれど。
それでも、なぜか放っておけない。
「そう言えば、牛鬼は男の子だったんだね」
「ん?ああ」
「最初、女の人の姿だったから」
「ああ、あれは。女の姿の方が油断させやすいんだ」
「・・・・・・・。」
サラリと言われた言葉に、顔が引きつる。
「まぁ、でも。改心したんだからね」
そう自分で納得させた。