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黒猫と、お揃いのマウスのストラップがぶらさがったケータイを開けたり締めたり。


黒猫との勉強がない、約四日間もこの動作を繰り返している私。


電話番号もメアドも知ってるけど、


この四日間連絡なし。


明日は勉強の日だから、今日一日我慢すればいいんだけどね?


でも気になるって言うか…


「今頃何やってんだろ…家出して他の猫の縄張りに入ってなきゃいいけど


怪我してなきゃいいけど」


呟いて、


「私、何言っちゃってんの」


と、自分の想像と呟き声に身震いして席を立ち上がった。


急に立ち上がった私を見て、私の二年後輩くんが驚いたように目を丸める。


「どうしたんスか?」


「気にしないで。いつもの奇行だから」と研究室に遊びにきていた涼子がふらふらと手を振っている。


「ってか涼子。あんたは研究室違うのに、何でこうしょっちゅう来るの」


私は細胞病理学。涼子は植物バイオの研究室。


こっちの研究室が病原菌の実態を調べたり、それに対する抗体を調べたりするのに対して、涼子は植物の遺伝のしくみなんかを調査している。


涼子は今、遺伝子操作で枝豆を大量に作成中。


できあがった枝豆を研究室の燃料用アルコールとビーカーを使って、ゆでてきてくれた。


ほかほかの枝豆。おいしそう、だけど


500mlのビーカーにいっぱい詰め込まれた枝豆って。


「これ、食べて人体に影響がないの?」


「それを実験してんじゃない」


私達は実験動物か。マウスかっての。




マウス……




私の大学に『黒猫研究室』ってのを作って欲しいわ。


ヤツの生態を調査するの。研究員は私一人だけどね。





“気まぐれ


生意気”





レポートは二行で終わっちゃうけど。