「るせーなぁ。朝っぱらから近所迷惑だぞ」


「誰のせいっ……」


また声をあげようとしたら、感情の奥底から何かが出来て声が詰まった。



「……泣くことかよ」



涙だ。


ジワリと瞳を滲ませる。



「助けてもらったお礼だと思えば安いモンだろ」



なにがお礼よ。



その目で彼を睨みつける。


唇をごしごしと拭きながら。



信じらんないっ!


やっぱりこの人は軽くてサイテー男だったんだ。



あたしはそのまま彼に背を向けると、振り向かずに家まで真っ直ぐ歩いて行った。