髪や頬を撫でる風の感覚がいつもと違う。
……それは、違う人の後ろだから?
それとも、空気が澄んでるから……?
お兄ちゃんでもない、圭太でもない人と、こんな風に一緒に居るなんて。
……不思議な感じだよ……。
家の近くまでだと音が気になると思って、近くのコンビニで降ろしてもらうことにした。
「ありがとうございました」
メットを外してお礼を言う。
助けてもらった上に、送ってもらっちゃってなんだか悪いなぁ。
「どういたしまして」
そう言った彼にもう一度おじぎをして、家の方向に歩いて行こうとすると。
「ちょっと待った」
呼び止められて、あたしはくるっと振り返った。
「忘れもん」
「……忘れ物?」