一言だけ、彼は放った。
「知らねえよ」
冷たく、面倒くさそうに。
……え。
顔から想像していた甘く優しい声とは随分かけ離れていて、胸にすきま風が吹く。
そ、そりゃあ。
きっとこの人もトイレから出て来たらこの惨劇だったわけで、事情なんて知らないだろうけど。
そんな言い方ってあんまりだよ……。
ここにこうやって取り残された同士、運命共同体だとか思ってくれないの?
しかも、まったく危機感なんて感じられない。
あたしは死にそうなほどの危機を感じてるのに、なに、この温度差。
この状況、どうみたって普通じゃないのに。
なんでそんなに余裕そうなの?



