渉専用のお弁当箱は新しく用意した。
さすがに、もうお兄ちゃんのを借りるわけにはいかないもんね。
渉にお弁当を作ることを一応お兄ちゃんに告げた時。
『……まさかな』って睨みを利かされたけど、それ以上は追及されなかった。
だけどあのときのお弁当のこと。
バレてるかもしれない……っ!!!
下ごしらえしておいたものを、冷蔵庫から出し、フライパンを温める。
渉の大好きなハンバーグだけは毎回欠かせない。
フライパンをせわしなく動かしながら、
「ねぇ、お兄ちゃんの分も作ろうか?」
リビングに入ってきたお兄ちゃんに声を掛けた。
妹が彼氏のお弁当は作って、兄である自分のお弁当を作らないっていい気分はしないんじゃないかと思って聞いてみたんだけど。
「いらねえ」
あたしの提案は速攻却下された。
「遠慮ならいらないよ?2人分も3人分も変わらないし」
事実、そうだもん。
「カップラーメンの方がうまい」
……ガーン…
…ちょ、ひどくない?