そんな顔することないのに。
あたしが聞いて気分が悪くなるような話は、一つもなかったんだから。
むしろ……うれしかった……。
「あれはお前の兄貴に言った言葉で、乃愛に言ったんじゃねえからな」
開き直ってそんなこと言われたって。
バッチリこの耳で聞いちゃったんだけど?
でも、あたしにも言って欲しいなーって思っていると。
「ここからは、乃愛に話す」
渉が、あたしの体を自分の正面に立たせた。
「……」
およそ30センチの距離で向き合って。
背の高い渉を見上げて……どきどきする。
「俺は、乃愛を拉致するために、黒凪に入った」
「……へっ?」
"拉致"?
…………や、やだぁ……。
それって、キザすぎない?
まぁ、強引な渉のセリフにしたらありなのかも……
「あ、まだ顔赤くするとこじゃねえから」



