それでも。
無意識に姿を探してしまう。
……渉。
こんなとこにいるわけないか……。
ナイフを持った相手にひるむことなく、真正面から向かっていった渉。
あたしに向けられたナイフを、一瞬の隙に自分の手で握った渉……。
あの瞬間のことはハッキリ覚えてる。
一瞬だったのに、なぜか、すごく長く感じて……。
渉は、向こう側の人間だったんでしょ?
どうして自分を傷つけてまで、あたしを助けてくれたの……?
騙してた、罪悪感……?
『こいつだけは渡さない』
放心状態だった中でも、ハッキリ耳に残ってる言葉。
あの言葉には、どんな意味があったの?
「あいつに、会いたいか……?」
「……っ」