ナイフを突きつけられたあたしに、渉が突進してきて。



お兄ちゃんに抱きとめられて。



……そこから先の記憶がない。



そのままお兄ちゃんに連れて帰られたのかな。





「ばかやろうっ……死ぬほど心配した……」


「……ごめんなさい」



圭太にも言わずに、ひとりで帰ってあんなことになって。



タクト先輩にも釘を刺されてたのに。


圭太にも沢山の迷惑と心配を掛けちゃったよね。



「いつも俺の目をかいくぐりやがって」


でも、その目は温かった。



「ごめん……なさい……」


「無事でよかった……。乃愛になんかあったら俺……」



こんな風に、ずっと一番近くであたしのことを見ててくれたのに。





「……ごめんね……」


……圭太のこと、好きにならなくて。