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真っ白く、霧のかかった中。
顔から血を流した渉が、悲しそうに微笑んでる。
渉の元へ駆け寄りたいのに、ふわふわと足が浮き、思うように進めない。
そうしてるうちにも、渉は背中を向けて遠くへ歩きだしちゃう。
あっ……
行かないで。
声を聞かせてよ……。
笑ってよ。
お願いだから……
……わたるっ……
「…………わた……っ……!!!!」
そのとき
……ふっ、と、重力が戻って来て。
目の前が、色のついた景色になる。
「乃愛……?」
見えたのは、圭太。
辺りを見回すと、見慣れた自分の部屋に居た。
あたし、夢見てたんだ……。