不良嫌いなあたしが、倉庫なんかに毎日来て、渉と数時間この密室で2人きりで過ごしてたなんて……。
改めて考えると、ちょっと信じられないや。
ここで、色んなことがあったなぁ……。
痴漢騒ぎの初対面の日は。
上から目線でイジワルな態度に、何様だ!?って思った。
それから……沢山の渉の顔を知った。
難しい顔をして勉強してる渉。
笑ってる渉。
眠ってる渉。
高校生らしい、素の渉を知った。
どれも、ホントの渉だった。
ウソなんて、見えなかった。
なのに、渉はずっとあたしを騙してたの……?
楽しかったはずの思い出を汚したくないよ……。
だんだんここにいるのがつらくなって。
「……帰ろう……」
立ち上がり、電気を消してドアを開けた。