……なんで?
この間も、彼女が居るだなんて嘘を言って先手を打って。
今回は、きっぱりやめろって言う。
「あの……どうしてそこまで、あたしを渉から遠ざけるの?」
「乃愛ちゃんのためだから」
……あたしの為?
意味がわかんない。
煌蘭の総長を兄に持つあたしに近づくことを、渉にやめさせようとするのならわかるのに。
「あたし今……渉に無視されてるの」
「……」
あたし訴えると、困ったように笑う斗真くん。
……知ってるよね。
そんなこと言われても困るか。
「あたしが嫌いなら、はっきりそう言ってくれたらいいのに……」
どこかで、期待してたのかもしれない。
"そんなことないよ"って。
ウソでもいいから、期待を持ちたかったのに……。
「乃愛ちゃんごめん……今はそれしか言えない」
真面目な顔でそう言った斗真くんは、俯き加減にあたしの脇をすり抜けて行った。