「乃愛!自分を責めちゃだめ!」


「……え?」


「出会った順番とか、過ごした時間とか、そういうのは残念だけど関係ないんだよ。恋は、落ちたもん勝ちなんだから!」


「……うん。ありがとう」


日南子にそう言われて、救われた気がした。



好きになってくれたその気持ちにこたえられないことは、仕方ない……。


渉があたしの気持ちにこたえてくれなくても、渉を責められないんだから。



「とにかく、今は圭太が学校に出てくるのをゆっくり待とう?」


「……うん」


あたしが何かしても、どうにもならないことはわかってる。


あたしがお兄ちゃんを責めたら、その怒りの矛先がどこへ向かうのかも。



だったら、この状態が解決するまで待つしかないのかな……?



「久郷には、乃愛からアクションを起こすべきだよ。

避けられても嫌がられても、自分が納得するまで久郷と向き合ってみなよ」


「……ん……」



渉と向き合え……か。


あたしにそんな勇気、あるかな……。




ふたつの問題を抱えたあたしは、本当に胸が苦しくてたまらなかった。