でも、



"もう待たねえ"


あのとき、圭太は言った。


あんな風に真っ直ぐに感情をあらわにして、怒りにまかせてキスまでした。



『側に居られるだけでいい』



そんな気持ちにも、いつの日が限界が来るっていうのを、目の当たりにした気がした。



誰かを好きになって、側に居られるだけでいい……なんて、結局理想論なのかな……。


他の誰かのモノになりそうになったら、気持ちは爆発しちゃうのかな……。



そしたら、あたしも……。





金曜の夜、あれからお兄ちゃんはあたし何かを言ってくることはなかった。


ただ、家の中に入って来て、思いっきりドアを閉めた音だけは聞こえた。


お兄ちゃんの苛立ちに、あたしからも声をかけることなんて出来なかった。