斗真が言う抜ける、とは。
中学卒業と同時に、ふたりで紅から抜けるか…と話していたんだ。
バイクは好きだが、もともと不良に憧れていたわけでもなんでもなく。
カツアゲや恐喝を繰り返すメンバー達に、嫌気がさしていたから。
「……言ってもどうにもならねえこと言うなよ」
結局抜けずに、仙道さんの言う通り黒凪に入ったのは俺らなんだから。
「つうか、仙道さんが渉を手放さないだろ」
斗真の言葉に、俺はゆっくりうなずいた。
それは俺も自覚がある。
メンバーのくせに、喧嘩以外の悪事には参加せず、
毎日たまり場にも顔を出さずこんなところで過ごせてるのも、仙道さんに買われてる証拠だ。
喧嘩が強くて、女を寄せ集められる。
それだけで、俺は紅にいる価値があるらしいから……。