「……送ってくれて、ありがとう……」
メットを渉に渡すと。
「じゃあ……気をつけて……」
あたしの目を見ずに、渉がぼそっと呟いた。
「え?あ、ありがとう。渉こそ、気をつけて……」
家の目の前まで送ってくれたのに、気をつけてっておかしいなって思いながら、その言葉を渉へ返した。
これから帰る渉の方が、気をつけて、なのに……。
「……」
「あの、どうか……した?」
「ん?いや、なんでもない……」
渉はいつものように笑ったつもりなんだろうけど、それもどこかぎこちなく感じた。
「じゃあな」
ポン……とあたしの頭の上に載せてくれた手が、いつものように温かったことだけは、確かだった……。