「……渉……」
目にかかる前髪をどけて、瞑っていてもキレイな目元を眺める。
イジワルで、強引だけど。
ホントは優しい人。
はじめて会ったあの日だって、あたしを助ける必要もないくせにclubから連れ出してくれて。
酔ってめんどくさい女なんて放置されて当然なのに、ここまで連れてきてくれた。
……渉は……優しいよ。
『乃愛は彼氏ほしくねえの?』
渉の言葉が蘇る。
……。
ダメダメっ!
欲なんか出しちゃダメなんだから。
こうやって、相手にしてもらえるうちが華なんだよ。
あたしが"女の子"として、相手にしてもらえるわけないんだから。
人より秀でてるとこなんてない、平均的な女子だし。